黄帝内経霊枢に通ずる日本はり医学会の使命と矜持 | 関西大阪での鍼灸・経絡治療の勉強会・セミナー、(一社)日本はり医学会(旧東洋はり医学会関西)


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2020.02.18

黄帝内経霊枢に通ずる日本はり医学会の使命と矜持

黄帝内経 霊枢 九鍼十二原第一.にみる医道の在り方と医家の矜持

原文「黄帝問於岐伯曰.余子萬民.養百姓.而收其租税.余哀其不給.而屬有疾病.余欲勿使被毒藥.無用 石.欲以微鍼.通其經脉.調其血氣.營其逆順出入之會.令可傳於後世.必明爲之法.令終而不滅.久而不絶.易用難忘.爲之經紀.異其章.別其表裏.爲之終始.令各有形.先立鍼經.願聞其情.岐伯荅曰.臣請推而次之.令有綱紀.始於一.終於九焉.請言其道.
小鍼之要.易陳而難入.粗守形.上守神.神乎神.客在門.未覩其疾.惡知其原.刺之微.在速遲.粗守關.上守機.機之動.不離其空.空中之機.清靜而微.其來不可逢.其往不可追.知機之道者.不可掛以髮.不知機道.叩之不發.知其往來.要與之期.粗之闇乎.妙哉工獨有之.往者爲逆.來者爲順.明知逆順.正行無問.迎而奪之.惡得無虚.追而濟之.惡得無實.迎之隨之.以意和之.鍼道畢矣.」

口語訳

あるとき、黄帝が岐泊を召されて、しみじみと話をなさるには、余はかねがね人民をわが子のように思い、また、文武百官をも大事にして、まつりごとを行っているつもりだ。しかしつらつら考えるにただ租税をとるばかりであって、人民どもに充分のこともしてやれない現状では余の心は痛む。
そもうえ病邪に犯されて苦しんでいる者たちを見るごとに、まことに不憫に思われてならない。
❝そこで、このやまいを治療してやるのに、ただくすりを飲ませるだけでなく、また単にメスを用いて手術するだけでもなくて、この小さな針をもって皮膚の中に刺し入れ、それによってとどこおった経脈を通じ、みだれた血気の調和をとり、経脈中の血気の運行を円滑にさせ、このようにして病気を治してやりたいと思うのである。
それと同時に、この針による治法を確立し、永く後の世に伝えて久しく絶えることのないようにしたい。また、ひとたび治法を確立すれば以後は運用も容易になるし、記憶にも便利になって、有意義であると思う。
そのために規範を作り、各章を明らかにし、内容の表裏関係を弁別して、始めから終わりまでをはっきりと区分したい。また、使用する針は、すべて具体的にその形状を規定したい。
このようにして、針術の教典となるものを編纂したいと考えている。❞
そこで、先生のご意見をうけたまわりたい。
これに対して、岐泊がうやうやしくご返事申し上げた。
たいへんありがたいと思召しと存じます。おそれながら、臣の知っております限りを、順序をおって申しあげることにいたします。
すべて物事には規範がございまして、一より初めて九に終わるのをよしといたします。ですから、まず第一章から始めまして、第九章までに、一応、針術の理を申し述べましょう。
小針を用いる要点は、いってしまえば簡単なことですが、その奥義に入ることは、はなはだむずかしいものでございます。
❝粗雑な医者は、病人の外見上に現れた病状だけにとらわれて、ありきたりの刺法を固守するものでありますが、優れた医者となりますと、病人の精神状態や、血気の盛衰の状況に注意して、補写を行うものであります。❞

病人の、この外に見えない内的要因こそが、きわめて大事なのでございます。つまり、医術に熟練したうえでの直観によりまして、人の神気の盛衰を知り、さらにはまた、人体内に浸入する外邪や、その外邪の出入する場所を知るわけなのであります。
これはたいへんに重要なことでありまして、病邪が人の神気の出入するところに浸入したときに、これを直観して、何の邪気が、何の経脈を犯しているかを発見することができないようでは、病の源も、その病の治療法もわかるはずがございません。
刺針の微妙な作用は、主として針の運用上での、刺入の遅速に関係するものであります。
❝粗雑な医者は、針を刺そうとして手足のつぼをさがしまわすだけですが、優れた医者は、病人の体質や栄養のよしあしや、精神状態をも考慮して、病人の血気の虚実や、病邪の盛衰の微妙な現れをつかむものであります。
しかし、この微妙な現れは、輸穴なしでは捕えられるものではありません。
しかも、この輸穴に現れる血気や邪正の虚実・盛衰の反応は、たいへんかすかでわかりにくいものであります。ですから、刺針によって気が至りましたならば、その正気を逃さないように、細心の注意を払わなければなりません。❞
病邪の勢いが強いときは、補法を行ってさらに邪気をうけ入れるようなことは、けっしてしてはなりません。
病の微妙な現れをよくわきまえた医者は、気が往来する時を的確につかんで、間髪いれず補写を施し、少しでもその機会を逃がしはしないものです。
そうでない医者は、まさしく補写を施さねばならないその時に、技術を充分に発揮できないのであります。それは、ちょうど弓に矢をつがえて、射るべき時に放たないのと同様でありまして、せっかくの治療の技術もこれでは本来の用をなしません。
❝針を用いる人は、必ず気の往来と、その逆順・盛衰を知って、刺針すべきときを捕えねばなりません。
粗雑な医者は、この点に暗いのであります。
ただ優れた医者だけが、針の極意を会得して、妙技を行うことができるのでございます。❞
気の逆順に関して申しますと、次のようであります。
気がすでに去って、脈気が虚して小となったものを逆といたします。
気が到来して、脈気が平になったものを順とといたします。
気の逆順をよく心得て、そのうえで正しい治療法を知っておれば、針法を施すにあたり、いささかの迷いも生じないはずであります。
経脈の走行に逆らって針を向け、邪気の流れてくる勢いを迎え撃ってその実を奪えば、どうして邪気が衰えないということがありましょうか。
反対に、経脈の走行に従って針を向け、正気の流れて行く勢いに従ってやれば、どうして正気の虚を実してやれないことがありましょうか。
この補写迎随の法を、自由自在に使うことができますならば、針術の重要な道理は尽くされているといえるのでございます。

日本はり医学会の矜持

東洋はりSTYLE発、日本はり医学会方式-宮脇スタイル経由、そして究極の脉診流経絡治療へ

霊枢十二原を要約すると、粗雑な医者は形にとらわれ、優れた医者は生命力を重視するとあります。
生命力の強化に努めてきた結果、東洋はりの先輩方はこれまで絶対にないといわれていた『相剋調整』の存在を明らかにされました。
その叡智を踏襲し臨床実践してきた当会は、母経の適否陰実相侮証は同側補瀉を発見し、①主たる変動経絡の補法×②相剋経の虚実を弁え補瀉×③陽経の虚実を弁え補瀉で完結できる使用経穴1~3穴以内の少数穴×最短時間で生命力を強化できる本治法を開発し、従来の東洋はりSTYLEにこれらの技術革新が加わり、新世紀の脉診流経絡治療『日本はり医学会方式』へと進化させることに成功しました。
その過程で、見立てた診断(証・選穴・適応側)の適否を、気の調整を用いて客観的に何度でも再現でき確認することができる方法『宮脇スタイル』を手に入れ、より盤石のものとなりました。
日本はり医の使命
今私たちが成し遂げようとしていることは、黄帝と岐白先生が、人民の幸せと健康を願い、それを成す医家が正しく医道を行えるように診察診断から治療終了に至るまでのテキストを作り遺そうとした正にそれに当たります。
宮脇先生、古野先生、丸尾先生は岐白先生です。
後に続く私たちは黄帝です。
偉大なる大老と正副会長および三好理事以下指導部が心血を注いで東洋はりSTYLEを継承発展させた、『日本はり医学会方式-宮脇スタイル』を臨床実践し、日本はり医として、ご縁のある患者さんを病苦から癒し和らげ治し防ぎ救いましょう。
そして、さらなる技術革新を図り、みんなで一緒に究極の脉診流経絡治療を創り上げていきましょう。